「キーボックスの番号を変更しようと思ったけれど、今の番号を忘れてしまった…」。この状況は、キーボックスのトラブルの中でも、最も深刻で、そして解決が困難なものの一つです。なぜなら、ほとんどのキーボックスは、セキュリティを確保するために、「現在の正しい暗証番号が分からなければ、新しい番号への変更も、そして開錠も、一切できない」ように、設計されているからです。これは、もし第三者がキーボックスを手にしても、勝手に番号を変更して、自分のものにできてしまっては、全く意味がないからです。この鉄壁のセキュリティが、いざ自分が当事者となった時には、絶望的な壁として、目の前に立ちはだかるのです。もし、あなたが暗証番号を忘れてしまった場合、残念ながら、メーカーに問い合わせても、その番号を教えてくれることは、絶対にありません。製造段階で、個々の製品の番号を記録・管理しているわけではないからです。つまり、正規の方法で、そのキーボックスを開ける手段は、もはや完全に失われてしまった、ということになります。そうなった場合に残された選択肢は、非常に限られています。一つは、時間と根気をかけて、「総当たり攻撃」を試みることです。4桁のダイヤル式であれば、0000から9999までの一万通りを、一つずつ試していけば、いつかは必ず開きます。しかし、これには、途方もない時間と、精神力が必要です。もう一つの、そして、より現実的な選択肢が、「物理的に破壊する」ことです。ボルトクリッパーや、ディスクグラインダーといった、強力な工具を使って、シャックル(U字金具)を切断したり、本体をこじ開けたりします。もちろん、この方法を選んだ場合、そのキーボックスは、二度と使うことはできません。新しいものを買い直すことになります。この悲劇を避けるための、唯一の、そして絶対的な対策。それは、「設定した暗証番号を、必ず、別の安全な場所に記録しておく」ことです。スマートフォンのパスワード管理アプリや、自宅の金庫など、キーボックスとは完全に切り離された場所に、その命綱となる番号を、必ずメモしておきましょう。その一手間が、未来のあなたを、この絶望的な状況から救い出してくれるのです。
忘れたら最後?番号変更できないキーボックスの悲劇