暗証番号をタッチパネルで入力したり、指紋で認証したりと、その利便性と高い防犯性から、近年、急速に普及している「電子ロック式金庫」。しかし、このハイテクな金庫もまた、アナログな金庫とは異なる、特有の「開かない」トラブルに見舞われることがあります。その原因のほとんどは、その名の通り「電気」に関するものです。電子ロック式金庫が開かなくなる、最も一般的で、そして最も多い原因が、「電池切れ」です。これらの金庫は、外部からの電源ではなく、本体に内蔵された乾電池で、その電子回路を動かしています。この電池が消耗し、完全に電力がなくなってしまえば、当然、テンキーを押しても、指紋を読み取らせても、何の反応も示さなくなります。多くの製品では、電池の残量が少なくなってくると、操作時に警告音が鳴ったり、LEDランプが点滅したりして、交換時期を知らせてくれます。このサインを見逃さないことが、トラブルを未然に防ぐ、最大のポイントです。では、もし、完全に電池が切れてしまった場合は、どうすれば良いのでしょうか。諦める必要はありません。メーカーは、必ず、緊急時のためのバックアップ手段を用意しています。一つは、「非常用電源供給端子」の存在です。金庫の外部の、キーパッドの下や側面などに、小さな端子が付いているはずです。ここに、市販の9Vの角型乾電池などを接触させることで、一時的に、外部から電力を供給し、テンキー操作を可能にすることができます。もう一つの、そして最終的なバックアップが、「非常開錠用の鍵(オーバーライドキー)」です。どんなにハイテクな電子ロック式金庫でも、そのほとんどには、万が一の電子的なトラブルに備え、従来の鍵と同じように、鍵穴に差し込んで開けられる、物理的な鍵が付属しています。この鍵穴は、普段は、化粧パネルなどで巧みに隠されていることが多いです。この非常用の鍵と、その鍵穴の場所を、購入時に必ず確認し、鍵自体は、金庫の中ではなく、絶対に、別の安全な場所に保管しておくこと。これが、電子ロック式金庫を、安心して使い続けるための、絶対的な鉄則です。ハイテクな利便性の裏には、こうしたアナログな備えが、不可欠なのです。
電子ロック式金庫が開かない!その原因と対処法