専門家が語る次世代へ資産を引き継ぐための金庫管理術
金庫の販売と点検に長年携わってきた立場から、金庫選びと同じくらい重要な「管理の知恵」についてお話しします。多くの家庭では金庫を購入して設置したことで満足してしまいがちですが、実はそこからが本当の管理の始まりです。まず、多くの人が驚かれるのが、耐火金庫には寿命があるという点です。耐火性能を維持するためのコンクリートに含まれる水分は、製造から約二十年が経過すると徐々に蒸発し、本来の耐火力を発揮できなくなります。つまり、親の代から受け継いだ古い金庫は、もはや大切なものを守る箱としては機能していない可能性が高いのです。また、相続の場面で最も多いトラブルは、金庫の暗証番号や鍵のありかが分からなくなることです。持ち主が急逝した場合、専門の業者を呼んで金庫を破壊して開けることになりますが、これには多額の費用がかかるだけでなく、故人の思いを傷つけるような悲しい作業になります。これを防ぐためには、金庫の存在とその開け方を、信頼できる親族や専門家に適切に共有しておく必要があります。最近では、相続手続きがスムーズに進むよう、遺言書と一緒に金庫の管理情報を信託銀行などに預けるケースも増えています。金庫は単に物を隠すための場所ではなく、次の世代へ確実にバトンを渡すためのタイムカプセルのような存在であるべきです。選ぶときから、自分がいなくなった後に誰がどのようにこの扉を開けるのかという視点を持つこと。それが、真の意味で家族を守る金庫管理術と言えるでしょう。