重厚なダイヤルを、右に何回、左に何回と、まるで映画のスパイのように回して開ける、ダイヤル式金庫。そのアナログな操作感は、非常に高いセキュリティを期待させますが、その一方で、非常にデリケートな操作ミスによって、開かなくなってしまうことも少なくありません。もし、あなたが「正しい番号に合わせているはずなのに、開かない」という状況に陥ったなら、故障を疑う前に、いくつかの基本的な「お作法」を、もう一度、見直してみてください。ダイヤル式金庫が開かない最も一般的な原因は、「ダイヤルの合わせ方」そのものの間違いです。特に、久しぶりに開ける場合や、焦っている時には、このミスを犯しがちです。ダイヤル操作の基本は、「行き過ぎたら、最初からやり直し」です。例えば、最初の数字が「右へ4回、25」だったとします。もし、あなたが25を通り過ぎて、26まで回してしまった場合、「少し戻せばいいや」と、25に戻しても、内部のディスクは正しい位置にセットされません。この場合は、一度、ダイヤルを左に数回、余分に回して、内部の機構を完全にリセットしてから、もう一度、最初から操作をやり直す必要があるのです。また、「最後に合わせた数字が、真上の目印(標線)に、正確に合っているか」も、非常に重要なポイントです。ほんのわずかでもズレていれば、ロックは解除されません。明るい場所で、真上から覗き込むようにして、正確に合わせることを心がけましょう。さらに、意外と見落としがちなのが、「扉への圧力」です。金庫の扉は非常に重く、その自重や、内部の気圧の変化によって、ロック部分に常に圧力がかかっていることがあります。この圧力が、ロック解除の妨げになるのです。対処法は、ダイヤルを合わせ終えた後、鍵を回す、あるいはハンドルを操作するのと同時に、もう片方の手や体で、金庫の扉を「ぐっ」と、強く押し込んでみてください。この「ひと押し」で、内部の機構にかかっていた圧力が解放され、今まで動かなかったロックが、嘘のようにスムーズに動くことがあります。これらの基本に立ち返っても開かない場合、初めて、内部の故障や、番号の記憶違いを疑うべきなのです。
ダイヤル式金庫が開かない、その意外な原因と対処法