「家の鍵を、もっと安全なものに交換したい」。そう決意した時、次にあなたが知るべきなのは、「現在、どのような種類の鍵が主流で、それぞれにどれくらいの防犯性能の違いがあるのか」という、具体的な知識です。鍵の世界は、私たちが思う以上に奥深く、その性能は、まさにピンからキリまで存在します。正しい知識を持つことが、後悔のない、最適な鍵交換への第一歩となります。まず、もしあなたのご自宅に、今もなお、鍵の両側がギザギザで、鍵穴が「く」の字型の「ディスクシリンダー錠」が付いているのであれば、それは極めて危険な状態です。このタイプは、2000年代初頭に、ピッキングの格好の標的となり、その脆弱性が社会問題化しました。もはや、防犯性能はゼロに近いと考え、一刻も早い交換を強く推奨します。これに代わって普及したのが、鍵の片側だけがギザギザの「ピンシリンダー錠」です。ディスクシリンダーよりは、構造が複雑になりましたが、これもまた、プロの侵入犯にとっては、時間をかければ解錠可能とされています。現代の防犯基準では、決して十分とは言えません。そして、現在、防犯性の高い鍵の代名詞として、最も広く普及しているのが、「ディンプルシリンダー錠」です。鍵の表面に、大きさや深さの異なる、複数の丸い「くぼみ(ディンプル)」があるのが特徴です。この鍵は、内部のピンが、上下だけでなく、左右や斜めといった、三次元的な方向に、しかも複数列にわたって配置されているため、ピッキングによる不正解錠は、事実上、不可能に近いレベルにまで困難になっています。ピンの組み合わせのパターンも、数億通りから、製品によっては数千億通りにも及び、そのセキュリティレベルは、従来の鍵とは比較になりません。さらに、これ以外にも、磁力を利用した「マグネットタンブラーシリンダー」や、電子的な認証を組み合わせたものなど、様々な高機能シリンダーが存在します。鍵交換は、単に新しいものに取り替えるのではなく、我が家の防犯レベルを、どのグレードまで引き上げるのか、という、明確な意思決定のプロセスです。まずは、ご自宅の玄関に行き、今付いている鍵の種類を確認することから、始めてみてはいかがでしょうか。